彫刻家、棚田康司は、これまで一貫して「人間」を、そして「少年少女」を彫り続けてきました。棚田の約20 年に亘る制作活動の中でも、とりわけ重要なモチーフとして存在し続けているのは「少年少女」です。それは、すでに子供ではないけれど、まだ大人でもない少年少女のように、あいまいな境界線に漂う存在が棚田の制作のテーマであるためです。不安定さや繊細さ、そして危うさを秘めた彼らは、我々が気づいていない人間としての本質的な部分を露わにした存在とも言えるかもしれません。モチーフは変わらずとも、少年少女の形態は作品ごとに変化を帯びています。それは木という自然物を材料としているためでもありますが、加えて棚田の彼らを捉える視点の変化によるものです。
「棚田康司-たちのぼる。」展と題した本展は、棚田にとって東京の美術館における初の個展となります。大学院修了作品から新作まで、また制作過程のスケッチなども含め、棚田の一連の作品群を網羅します。
「たちのぼる。」という言葉は、煙のイメージから湧き出たものです。それは新作のタイトルに由来するものでありますが、煙のようにゆらゆらと揺れながら、天空へ昇っていく少年に、あらゆる試練に遭遇しつつも、ひとりの人間として上昇するイメージ、また上昇して欲しいという思いが集約されています。本展を通して、棚田の作品世界に触れて頂くと同時に、現代美術における木彫の一側面を捉える機会となりましたら幸いです。
<開催案内>会 期 2012年9月16日(日曜)~11月25日(日曜)
休館日 月曜日(ただし9月17日(月曜・祝)、
10月8日(月曜・祝)は開館、翌日休館)
開館時間 午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
観覧料 一般500円、高・大学生および65~74歳300円、
中学生以下および75歳以上無料(その他各種割引制度あり)
主 催 練馬区立美術館/日本経済新聞社/フジテレビジョン
助 成 公益財団法人 花王芸術・科学財団
協 力 ミヅマアートギャラリー
棚田康司氏プロフィール1968年 兵庫県明石市生まれ
1993年 東京造形大学造形学部美術学科2類(彫刻)卒業
1995年 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了(深井隆研究室)
2001年 文化庁芸術家在外研修員としてドイツ・ベルリンに7ヶ月滞在
2005年 「第8回岡本太郎記念現代芸術大賞」特別賞受賞
2008年 「十一の少年、一の少女」(ヴァンジ彫刻庭園美術館、静岡)
2009年 「Essential Experiences」(Museo Regionale d`Arte Moderna e Contemporanea パレルモ・イタリア)、「SO+ZO 展未来をひらく造形の過去と現在1960s→」(Bunkamura ザ・ミュージアム、東京)
2010年 「創造と回帰|現代木彫の潮流」(北海道近代美術館)、「第20 回タカシマヤ美術賞」受賞
2011年 「生える少年」(ミヅマアートギャラリー、東京)、「○と一(らせんとえんてい)」(スパイラルガーデン、東京)
<会期中のイベント>アーティスト・トーク
棚田氏によるギャラリー・トーク 日時 9月22日(土曜)、10月27日(土曜)
午後3時から1時間程度
※10月27日はミヅマアートギャラリーのディレクター三潴末雄氏との対談となります。
ワークショップ「棚田氏と一緒に木彫に挑戦!」 日時 10月20日(土曜)、10月21日(日曜)の2日間
午前10時30分~午後4時
声優、銀河万丈氏による読み語り 日時 10月7日(日曜) 午後3時~4時30分
特別講演会(1)暮沢剛巳氏(東京工科大学デザイン学部准教授)「未性者と表現」※未性者=作品における性の在り様が固定されておらず、未成年男子、未成年女子、成年男子、成年女子の四者間を揺れ動くことを意味する造語
日時 10月6日(土曜) 午後2時30分~午後4時
(2)武笠朗氏(実践女子大学教授)「日本の木彫像」 日時 11月17日(土曜) 午後2時30分~午後4時
こども講演会小倉絵里子氏(高崎市タワー美術館学芸員)「仏像ってなんだ?木彫ってなんだ?」
日時 11月24日(土曜) 午後2時30分~午後4時